言葉でなんとかしてやろう

「山陰広告賞」という賞があります。山陰の広告文化や技術の向上、地域振興を図ることを目的に行われています。毎年、その前年1年間に山陰で制作された広告の中から優れた作品を表彰し、展示しています。「島根広告協会」が1977年に開催したのが始まりで、現在は「山陰広告協会」が主催しています。会は100%民間で運営され、公的補助金などは一切もらわず(もらえず)構成する団体や企業からの資金で成り立っています。

審査委員長はコピーライター・写真家の日下慶太さん。元電通で活躍されたクリエイターです。ここのところ長く審査委員長を勤めていただいています。

日下さんが「講評」のなかで、クリエイティブにおける言葉の大切さについて述べておられます。『山陰のデザインのクオリティは高い。それは間違いない。そして、美しい写真や映像を撮ることができる。ただ、言葉が弱い。例えば、美しい映像がずっと続き、最後にいいコピーが1本入るとより深く印象に残るのだけれども、そういった言葉がない。もしくは、無難な言葉で終わっている。「言葉でなんとかしてやろう」という挑戦が少ない。もちろん、山陰はデザイナーの人がほとんどで、コピーライティングもデザイナーが担当しているというローカルのクリエイティブ事情はわかります。山陰以外でも都市部以外はどこもこの問題を抱えています。言葉の専門的な勉強は受けていない人がほとんどでしょう。ただ、挑戦はしてほしいのです。』

作品における「言葉」の大切さ、「言葉で何とかしてやろう」という気持ち、人は視覚で多くの情報をキャッチするけれども、脳のメモリに保存しておくのは視覚ではなく「言葉」なのです。言葉で覚えておく。そして人に伝えるのも言葉で伝える。山陰のクリエイティブがその先に行くには「言葉」でチャレンジすることが必要だ。といっておられます。

「山陰広告賞2024」の表彰式は、2024年6月21日(金)エクセル東急(松江市)で行われました。弊社から出品した「書籍『余白の中で。』」は、パンフレット部門の金賞をいただきました。島根県の山間地、人口4000人余りのまち飯南町の町民や、若い役場職員・大学教授・デザイナー・ライター、そして弊社スタッフが何度も打ち合わせやワークショップを繰り返しながら完成した書籍です。評では、「新しいローカルパンフレットの姿を提示してくれた」とうれしい評価をしていただきました。