【書評】 山陰文化ライブラリー「松江の近代建築~明治・大正・昭和 記憶のまちかど~」

足立正智 著

・・・「目からうろこ」という言葉があるが、筆者は本書を読んで圧倒された。自分の住む松江市の近代化の流れが、インフラを通してこのようになっていたのかと、改めて知らされ、なるほど歴史や芸術を慈しむ町のはずだと納得させられたのである。それにしてもタイトルの中に「建築」なる用語はあるものの、この本は単なる建築のノウハウを記したものでは決してない。

本書は「まえがき」の後に、次の21章があり、その後に「参考文献」と「あとがき」で締めくくられている。・・・この項目を一覧すれば、本書が普通の建築解説書ではないことが理解されよう。・・・

また、叙述を助けるものとして写真だけでも148枚収められ、図も65枚、一覧表は5枚挿入されている。写真の中には今はなくなった県庁の建物や競輪場などの風景もあり、読者に無言の説明を果たしてくれている。よくぞこれだけの量を集めたものだと、改めて著者の努力と力量に敬意を表したい。

本書は今後の松江市の町づくりにも大きく役立つ基本図書になるはずだというのが、筆者の偽らぬ読後感なのである。

2022年1月24日 島根日日新聞 酒井薫美(元島根大学法文学部教授)